証す

koikeakira2004-11-16

『人間は神々についての真実、森羅万象についての真実を知らない。また、永遠に知ることもない。なぜなら、たとえ真実が偶然人の口をついて出てきたとしても。それが真実であると確かめる術を我々は持たないからだ』クセノパネス(B.C.6)

それを云っちゃあおしめェよ。わははははは。ああ悲しい。こんなに簡単に言ってくれるなんて。もう立ち直れない。でもなんだか気持ちいい。こんな言葉大好き。

文化のグローバライズ、言語と音律

今地球上に存在する言語の数は3万だとも言うし60万とも言われている。こんなにも曖昧なのは言語の定義からして定めようが無いからだ。言語を他の言語と区別するのは、言葉の構造や体系ではなくて、社会的・歴史的・地理的背景。例えばドイツ語とオランダ語の構造の差は、九州弁と東北弁の差よりもはるかに小さい。言語の数なんて、まさに数えようがない。
でも3万説者も60万説者も共通して言っていることがある。これからの五十年で言語の数は一か二桁減るだろうということ。アラスカで、沖縄で、ブラジル西部で、土着語話者の高齢化はガンガン進んでいる。言語もグローバライズされている。
生物種の数が一つ減ることのデメリットは、未知のワクチンを抽出する機会が無くなることだとはっきりしているけれど、言語のそれはわかりにくい。もちろん語学好きの文系人間に聞けば怒濤の勢いで答えが返ってくるだろうけれど、答えは一つじゃないだろう。
ところで音律もグローバル化が言語以上に進んでいる。こっちは言語よりさらに目立たない。今ポップスで使われている音律は全て平均率だ。平均率は、その名の通り1オクターブ12個の音の一個あたりの差(周波数)が同じで、平均化された音階。簡単に転調できるけれど、二音間の周波数比が無理数となるので、オクターブ以外の音とはハーモニーにならないという最悪な欠点がある。
一方自然界で最も自然で美しい「天使の旋律」と言われるのがピタゴラス律。6:8:9:12の長さの弦を張った音階で、ハープなどに使われる。
その他にも、ゴスペルは準正調音階、バロック中全音律モーツァルトやベートーベンはべルクマイスター、キルンベルガーなど伝統があるものの、実際素人が演奏をやろうとなるとピアノやコンピューターの調律である平均律になってしまう。「生演奏は違う」の正体ここにあり。ベルクマイスターなんか、ドレミファソラシドと聞くだけで「あああ!ベートーベン!!」って思うもんね。女子十二楽坊の音があんなに薄っぺらいのも、中国の音律をちゃんと使っていないから。
モーツァルトの死因は音楽史上の謎だけれど、「自分の曲が平均律で演奏されたのを聞き、あまりのハーモニーの汚さにショックを受けて死んだ」なんて説があるらしい。それくらい、平均率は感動を与えにくい音律なのだ。
もちろん転調とコンピューターが大得意な平均率がなければ、ポップスはここまで発展しなかったのだけれど。
言語は他言語で代用できないけれど、音律は平均率で代用できるところが恐ろしい。平均率以外の音律は、伝統を守る義務を持つ者だけが演奏するものになりつつある。
ちなみに私が今まで聞いた中で一番平均率からかけ離れ、耳慣れないと思ったのはギリシャのブズキという楽器を使った伝統音楽の音律です。最初は違和感から体の力が抜けていくような感覚になりましたが、今では大好きで、古代ギリシャに思いを馳せながら聞いています。そういえばサティも古代ギリシャへのオマージュをいくつか捧げていますね。いつかこの音律でサティの「グノシェンヌ」を打ち込んでみよう。

クリップ「グノーシス」1

本来の意味は、ギリシャ語で直観的に得られた知識のことだが、キリスト教における初期の異端のこと。1945年12月にエジプトで発見された「ナグ・ハマディ写本」は、グノーシス派のもっとも貴重な情報である。10冊以上の文書から構成されている。
グノーシス派自身がいくつかの有力な宗派から構成されており、また思想的なことを的確に述べること自体が難しいという理由により、グノーシス派のことを包括的に述べるには、かなりの困難を伴う。しかし敢えていくつかの特徴を述べる。
真理は教えられるものではなく自ら探求するものであると考える傾向がある。
形式的な通常の位階制度を持たなかった。例えば礼拝の時の司祭は、その場でくじ引きで決める。
12使徒に含まれないマグダラのマリアを高く評価する。
正統派とは違って、女性蔑視の傾向から免れていた。
知識を重視する傾向がある。エデンの園のアダムとイブの話においても、蛇が二人に知恵を授けたとして、この話を肯定的に見ている。
世界を創造した者を真の神と区別して否定する。このことから目の前の現実よりも、精神的なことや来世を重視する傾向がある。

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gnosisはギリシャ語で「覚知、叡智」の意味。3世紀前後に地中海世界全体と中東全域に影響が及んだ宗教運動のこと。人間と宇宙はそれぞれ物質的、肉体的な実体と神的で超越的な本質に分けられ、人間には、自覚されていないものの宇宙を超越した「原人」の神的な本質が断片として残っており、啓示によりその存在を知ることが救済につながるとした。初期ユダヤ教が起源と考えられており、キリスト教の発生と時期を同じくして広まった。