納得の行く肉の食べ方

koikeakira2015-12-12

2年ほど続けていたベジタリアン(ノンミート)は止めてしまって。最近の食肉はもっぱら鹿肉です。

ここ備前市は市役所に「シカ・イノシシ係」がある、鹿パラダイスです。
近くの猟師さんが駆除したものを、友達が引取り解体し、私は肉と内蔵をもらい料理して、料理を友達にお返しします。
3キロもらって1キロお返し、1キロは他の人に配って、残り1キロは我が家で食べる。
そうすると配ったところから野菜や米のお返しを頂いて次の鹿肉料理の材料になる。世の中まわるまわる。
お金の介入しない経済活動万歳!

ちなみに猟師さんはなぜかみんな鹿は食べません。捨ててしまうのです。
首だけ市役所にもっていって駆除褒賞金をもらっておしまい。
イノシシ肉は人気があって高く売れます。日本人は本当に油の多い肉が好きですね。

鹿肉は脂質含有率は1〜3%と超高たんぱく・低カロリー。ビタミンB、DHA、鉄分も豊富という究極ヘルシー肉です。海外のセレブの間でも大流行…はしてません(笑)きっと知らないのでしょう。
何よりも、日本人がずっと食べてきた肉です。

写真は2歳メスの心臓。よく見るとナタの跡があります。鹿が早く楽になれるように猟師さんはトドメを刺すのです。

鹿の心臓はとても美味しいです。肝臓と合わせてパテ・ド・カンパーニュにすると絶品です。
今だったら柿とか、採れたての季節の野菜や果物も入れて。
ジビエのパテなんて、東京の西側の店で出したら、ひと皿五千円はくだらないよね〜」
なんて移住仲間に言われますが、タダです。山の神様はお金は取りません。本当にリッチですね。


肉や内蔵をとりわけながら、鹿の人生(鹿生?)について思いを馳せます。
2歳のメスって、人間にしたらちょうど私の娘と同じくらいだなぁとか思うと、少し涙が出ます。
内臓を触っていると、どんな鹿だったかわかるので、生前の姿をイメージしながら感謝と胸いっぱいの供養の気持ちで料理します。
鹿の遺恨を感じる時はお経を唱えるとマジですっきりします。


味も個体ごとに異なりますが、若干の傾向はあります。
大きくて運動量の多いオスの鹿は、鍛えられた素直な腿肉をしているので、かえって筋に対して包丁が入りやすく、ステーキに向いています。
まだ若い鹿は骨の周りの肉が若葉のような匂いでスペアリブが美味。女子は当たり外れなくどの子もそれなりに美味しい。
男子は味の幅が広く、食べるのが面倒になるような雑な肉もあれば、うおおおぉ!と唸るような完成度の高い味もあります。

よくクサイと言われるのは、血抜きをしっかりしてないから。
私は試行錯誤の上、水あり・水なしの2段階で5日間かけて血抜きする方法に至りました。
また、肉はある程度回数を食べて、味と匂いに慣れないと、美味しさがわからないと思います。私も最初はわかりませんでした。食べ続けて体が鹿肉を求めるようになってからが美味しいと思います。
一度きり食べて珍味で終わりにはして欲しくないです。


近くに猟師さんがいる方、いらない鹿ちょうだいって言ったら、くれると思います。
冬のオールマイティなメイン食材として、昔ながらの健康食として。安価で良質、薬剤投与なし、食料問題解決、生態系維持、里山復興、悪いことがいっこもない。現代日本における鹿食文化勃興を願わずにいられません。


ちなみに、鹿肉が手に入らない東京などで暮らしていて、一番食べたいと思える肉は、アイスランドの羊肉です。アイスランドは完全放牧、薬剤投与禁止。オーガニックな食肉なのです。だって岩場が多くて餌はコケがメインで放牧するしかないから。だって寒くて菌が繁殖しないから薬いらないから。サイコーですね。

日本で取り扱っているのは一社だけです。
http://www15.plala.or.jp/fujiwara-sangyou/
通販に積極的な会社ではないので、顧客サービスなんていうものは求めずに、卸の片手間に送ってもらうという気持ちが必要ですが、絶品です。

それにしても、顔も性別もわからない動物の肉を切り身で買うのは、あまり気持ちのいいものじゃないですね。
東京を抜け出して、やっと肉を食べる時に感じていた違和感や罪悪感の正体が、鹿肉を食べるという体験を通して理解することができました。