会場について

本邦初公開の小品が数点あったものの、スラブ叙情詩などの大作が無かったのはやはり物足りない感じがしました。特にテンペラ画は一枚もありません。「生涯と芸術展」の時は見に行くたびテンペラの「演劇芸術のアレゴリー」を楽しみにしていた私は、あの絵に未練たらたらで失恋気分です。
照明ですが、作品保護の立場からすれば都美は優れているのでしょうが、やはり暗すぎる。
ミュシャのポスターは金と銀のあしらいがよく計算されていて、いろいろな角度から見れば表情が変わるようにできています。暗い照明ではその良さがわかりにくい。
十年前、房総半島の先端の感じのよい美術館でこっそりやっていたミュシャ展では、ポスター達は作品を光から守るというガラス越しに、それはもう贅沢に照明を浴びていました。特に「ジスモンダ」は本物を見ると最も迫力があるポスターだと思うのですが、その時は神々しさすら感じ、非常にパワフルでした。今日見た「ジスモンダ」は美しいけれど少し陰鬱な表情だった。
美術館について贅沢を言おうと思えばいくらでも言えるのですが、人が多かったり会場が狭くて圧迫感があると、作品を楽しもうという気持ちに焦りが出てきます。都美のあの環境からはいつもながら入場者を楽しませようという気持ちは感じられず、ただ展覧会を消化するためのシステマティックな会場であるように感じます。