ooka氏へのレス

書き込みありがとうございます。
ブレヒトにお詳しい大岡さんなら、安部公房には少なからず思うところがあるだろうと思っていました。もしできましたら、安部公房ブレヒトについてどこかで何か書いて頂けませんでしょうか?今すごく興味のあるところなんです。

>あの世代の書くものは、概してそういう嫌いがありますな。
これはいったい何故なんでしょうか?偏見として、青春期を敗戦後の日本で過ごすと変態的なセックスなんて思いつくヒマは無さそうではあるけれど。それにしてもあまりにあっさりし過ぎていて、気持ちが悪いです。まるで異常性欲の完璧なカモフラージュみたい、なんて思ったりします。

中上健次とつるんでいた正津勉という詩人の門下にいました。そこで聞いた話しでは、中上健次は原稿に句読点を全く打たずまた改行すらしなかったと。編集の方の校正でやっと読める本の形にしたそうです。そのような書き方をしたのは中上健次が学校に行かずにおばあちゃんに読み書きを教わったからだと聞きました。
中上健次が過大評価される要因は少なくとも二つあると思うのですが、一つにそのような書き方による日本語古来の言葉のリズムがあると思います。私は中上健次の小説の内容ではなく言葉のリズムに病み付きになっていました。本当に麻薬性のあるリズムだと思います、ジャズやヒップホップ並に。
もう一つの要因は、作品の世界観です。言葉は悪いですが、ああいう現代的な低所得の世界に所属する人達の中にも活字好きの潜在人口はかなりの数がいるのですが、そういった人が好きになれる文学作品の数は本当に限られています。中上健次の他に誰がいるかと言えば、ほとんど誰もいない。だからその人口が中上健次ヘミングウェイブコウスキーに集中して熱狂するのだと思います。
あと、中上健次に文句を言う人がいないのかは、単純に怖いからだと思います。あの世界と登場人物達が。インテリ層のトラックドライバーコンプレックス(笑)って、相当強いものですから。
いわゆる正統のアカデミズムの場所に出入りしたことの無い私ですが、そこには中上健次を否定する勇気があるのでしょうか?だとしたらすごく見てみたいです。