資本主義の聖域

koikeakira2006-05-06

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060504-00000046-jij-int


このニュースを見て最初に思い出すのは、知り合いの60手前のある夫婦。二人は別居中で熟年離婚寸前なんですが、奥さんが判を押してある離婚届をまだ提出しないでとっておいてあるんです。

来年の四月から施行される年金分割というのがあります。いままでは離婚すると厚生年金に入っていた夫だけが年金を受け取るようになっていて、元夫の労働を支えていた元妻の家事労働および家計にしめるパートの賃金は全く省みられずゼロ円扱いになってしまっていたんですね。それがやっと、元夫と元妻で分割されるようになるのです。本当にやっと、だと思います。

なので、その知り合いの女性は来年の四月まで離婚届をとっておいて持っているというわけです。そんな奥さんに対して旦那さんの方は「あの人はそういう人だ」という言い方をしていました。奥さんを罵倒する人でした。離婚は正解のように見えます。奥さんは家を出てパートで一人暮らしをしているので、将来のことを考えると年金分割がなければ別居や離婚はできませんでした。

こうした人たちが他にもたくさんいるのではないかと思います。だから来年の四月一日にはどれだけの離婚があるのか見ものです。



私は離婚が増えることは社会全体にとっていいことだと思っています。特にこの少子化の状況下ではなおさら、離婚はもっと増えるべきです。

現時点でもこれだけ一人親家庭が多いにもかかわらず、現在の日本では核家族による核家族のための育児文化・価値観が排他的にふるまっています。

一人親の家庭になってみると世間が家族のあり方を父、母、子と判で押しているのがよくわかります。一人親の家庭は実に不利な状況です。
育児文化にもっと多様性があれば、子育ても離婚も再婚ももっと楽しくなると思います。

少子化の原因というのも実はそこに大きなウェイトを占めていて、自由な価値観で子育てができない息苦しさこそ、子育ての最大の障害だと感じます。また「子供にはお金がかかる」原因も経済力の問題以前に、子育ての方法に選択肢が少ないゆえです。

カッコよく!

少子化対策として一人親のススメはかなり有効ではないでしょうか。母子家庭の母や、父子家庭の父がカッコよく!暮らせる風潮が欲しいです。制度だけではなく、風潮が。

しかし現状を見てみると、一人で働きながらカッコよく!子供を育てるのは不可能です。保育園は平日も6時か7時に閉まってしまうから片親では残業もつきあいもできなければ出世もできません。定時5時で帰れるのは公務員ぐらいなもので、サービスや販売の派遣社員の勤務時間はほとんどが20時〜22時まで。さらに保育園は日曜・祝日は休み。実際にはバイトしかできないわけです。実に根深い病根です。

独身貴族といいますが、本当に貴族でいられるのは独身だけだと感じます。みんな貴族になりたいに決まってます。一人親に限らず、子供を育てる親が貴族でいられる風潮と、その風潮の基盤となる制度が欲しいです。

ところで家事。

赤の他人からサービスを買うと考えると、家族のように愛情を込めた掃除、洗濯、料理、育児というのはものすごい値段が付きます。愛情に価値があるとかそういうことを言いたいのではなくて、きめ細やかなホスピタリティを求めたら泊まるホテルの値段は一桁上がるということをもっとみんな知ったらいいと思います。2ちゃんねるとかを見ていると特に。
このあたりからも、貧乏な男は奥さんを大事にしないという悪循環の輪の構造が見えたりします。貧乏人はホスピタリティにつく値段を知らない。

値段がついたら

家事は資本主義の聖域でした。現在の少子化は資本主義ゆえの少子化のようにも見えますが、少子化ゆえに家事を商品化しなくてはならないのだとしたら、膨張した資本主義がその発展を支えてきた聖域を侵すというわかりやすい図となります。
家事にその質を考慮した市場価格が定まった日には、主婦叩きも無くなれば、先述の夫婦の旦那のような男と結婚する女もいなくなるでしょう。
経済活動である育児や家事をする権利の主張が当たり前になれば、一人親の家庭で普通に子供を育てることができるでしょう。それはとてもいいことのように思えます。そう思うと、今ある資本主義はずいぶん中途半端ですね。いっそ人間に値段がついてしまえば、戦争もなくなったりして。