エテロニム[異名]

koikeakira2004-11-10

 ポルトガルの詩人フェルナンド・ペソアは作品を発表するさい、エテロニムと呼ばれる偽名を使った。エテロニムには性別、年齢、住んでいる家や両親の職業、時には足のサイズまで、こと細かな設定がなされ彼のノートに残っている。ペソアはエテロニムで作品を書くことを通し、様々な人物の人生を体験した。その人数は70を超える。
 私も今までいくつかのエテロニムを操ってきた。現実でもネットでも。ネットではハンドルネームと言うべきか。発言の自由を守るためのものや、発言をより効果的にするための実用のもの、また、願望の発露であるエテロニムもある。どれもが私の役に立ってきてくれた。
エテロニムは、世界に存在しようとする自分の意志が、ただ一つの個体ではないということを知覚化してくれる。エテロニムによって、肉体ではない、流動的でパラレルな器官が自分の中にあることを確かめることができる。