マダム・タッソーの蝋人形館

有名な話ではありますが、NYにあるマダム・タッソーの蝋人形館には、たった一人だけ歴史上の人物ではない蝋人形があります。館内に入ってまず最初にお目にかかる「sleeping beauty」です。機械仕掛けで呼吸しているのかのよに胸が上下するこの像には実はちゃんとモデルがいるのですが、あまりの美しさに見る人々が様々な物語を重ねて語るので[sleeping beauty]と呼ばれるようになり、いつしか彼女固有の物語も名前も取り払われてしまいました。この逸話は、人形の美しさにはその人形本来の意味など持たず、見る者の物語や幻想を自在に受け入れる性質があることを語っています。