切迫感

経営とはなんと恐ろしいのだろうと身に染みる。怖い。怖くてたまらない。毎日が博打の連続だ。反響の無かったダイレクトメール一通について思うと、血を一滴無駄に流したような気持ちになる。私の血だけならまだよいのだが、父の血や社員の血まで流させてしまっている。一通のDMに、また、一分の休憩に、まさに身を切られる思いがする。
ここまで切実な想いを、雇われの身では感じることはまず無いだろう。私自身アルバイトをしていた中で、店に対し相当の愛着を持ったことはある。けれども、経営者の方から「バイトはバイト」として一線を引いている以上は、その部分に踏み込めない分だけ愛せなかった。今思い出せば、店に対してはこちらの一方通行な片思いで、経営そのものは所詮他人事だったように思う。経営するとなると、会社に来た初日にして完全に会社と同化する。臆病者の私は父に頼み込んで、営業をやっている当面の給料を基本給ゼロの完全歩合制にしてもらった。それでも電気代や封筒一枚に至るまで出費をさせているという事実は巨大で恐ろしい。