芸者の話

きのうはSという常連の一人が店に来た。
隣に座る女の子一人一人に「おまえはこの店に必要ない、芸者をやめろ」と言う男。それが彼の趣味である。
もちろん私も最初洗礼を食らった。
しかしそういった手合いに傷つけられるほど若くも優しくもない私。それは彼にも本能で伝わったのだろう、私は彼にめったに話しかけられない。
指名されるのはH子さん。
彼女が泣いたりするとSは大喜びでそれこそハアハアしながら「お客さまの前で泣くな」と怒る。
馬鹿馬鹿しくて見ていられない。
後でH子さんに「大変だったね」と言いに行くと、「泣くのは演技だから大丈夫よ。あの人私が泣くと一万円くれるから。」との答えが返ってきた。需要と供給。
でも、Sみたいな人間を肯定してはいけない。自己確認をさせてはいけないんだよ。絶対に、絶対に。