少女漫画と文学

対局にあるのがやはり少女漫画やハーレクイン小説などの世界です。もっとも、最近の少女漫画は世相を反映してか、世知辛さを語るものが流行なのでひとくくりにはできませんが。
しかしステレオタイプな少女漫画の世界は高度な安定の上に成り立っています。主人公の父親がリストラにならないどころか「働いている」という事実は透明な記号として作中に埋もれています。そして主人公は学園生活に専念できるのです。
マズローの欲求階層説(生理的欲求→安全・安定の欲求→社会的欲求→自我・自尊の欲求→自己実現の欲求というやつですね)で言えば第三段階以上の話と言いましょうか。
また文学も2500年の長きに渡り第三段階以上のグリーンシートに居座り続けていました。低次欲求に言及はあるものの。
しかしこの世界では物質界が安定している分、人の心はすばらしく不安定です。ブコウスキーやジュネが貧乏でも一貫して同じ主張を繰り返しているのとは実に対称的です。