盲人

私は都営住宅のある地区を担当している。盲人が多い。そうした人たちへの郵便物も、マニュアルとしてはただポストに入れておけばいい。でも目の見えない老人がエレベーター無しの5階に一人暮らしという、絶望的な状況もある。そういう場合、私は部屋のチャイムを押して本人に一通一通どこからきたどんな手紙か、説明して渡す。私が階段を上り降りする労力は彼等の100分の一以下だろう。それくらいしてやらないと良心の呵責に苛まれる。それにやたらと有り難がってもらえるので、こちらとしても有り難い。
もちろん、この場合一軒回るのに数分かかる。盲人宅を通常通りにやり過ごせば私の仕事はあと三十分早く終わるだろう。前述の通り全体の仕事がペースがゆっくりなので、こういうことができる。私の他にもこうしたことをしている配達員が何人もいるはずだ。