母、ケーテ

話が逸れました。政治的な意義や作為は抜きにして、戦争と切り離して見てもケーテの作品は素晴らしい。ケーテは戦争を描こうとはしませんでした。反戦のポスターを頼まれた時は数枚描きましたが、どれもこれも特定の誰かを悪だ善だと指差すものではなく、貧困と子の死に苦しむ人々の姿を映し出しただけです。中でも際立つのが母親たちの姿です。ケーテは二度の大戦で息子と孫をそれぞれ亡くしています。「母が子を守る」というモチーフは特に彫刻において繰り返し繰り返し描かれます。子供をすべて覆い隠した母の像もあります。画像では全く伝わらないのが残念ですが。普遍的な母性というのが、芸術家である前のケーテの姿です。