逢う魔ヶ時

koikeakira2006-12-10

長くて一年ですね、と先月言われた祖母90歳。上顎癌は発見が非常に難しいそうで、すでに癌の深度は最高の4度。
本人には告知はせず、普段の生活は変えないことにした。今まで通り親族で交代しながら祖母の食事の支度や散歩を手伝う。祖母はもう手術には耐えられないし、ただ残りの人生を楽しんで欲しいと皆が思っている。

今日は母と私で祖母の家に行く。紅葉を見せに、車椅子で少し遠くの公園まで。道すがら母が四世代だねと笑う。祖母と母と私と娘。

銀杏は空に地面に咲き、黄金の絨毯。風が吹けば黄金の雨。何か違った空間にいるような気がした。ひとしきり遊んで、祖母が寒いというので帰ることに。

帰りみち。そこで会った人物は、父。母とは離婚して、もう10年ばかり会っていない。離婚の原因は父の暴力。

「げ、なんでいるの」と母が呟く。銀杏を見にきた、と父。誰だか覚えてる?と祖母に聞く。祖母に時間が無いということは、父には私から話してある。わからないよ、こんなに歳とっちゃったから、私のこともわからないんじゃないのかい、と祖母が返す。いや、まだカワイイよと父がふざける。母がその頭をはたく。それだけだった。知人のようにすれ違ったっきりだった。