異性の相棒

koikeakira2009-12-27

社内で一番頼りにしていたSEのJが退職することになった。茫然自失。
私はただアホみたいに思いついたことを言いたい放題言っているだけで、彼が全部、形にしてくれていた。彼がいないと全く仕事にならない。

プログラム、HP・CG作成から、CADやら何やら、配線工事まで、なんでもすぐにできるJ。テクニカルな問題はすべて解決してくれていた。ほぼ毎日の来客の対応も、全てJと一緒。背が高くキビキビとした上品なしぐさの外国人であり、見栄えも大変よろしい。私のような157cmのチビがいくら一人で気焔を吐いても、うまく来客をあしらえはしない。Jという相棒がいることが何よりも誇りで、自慢で、嬉しくて、自信を持って商談を進めることができた。すべてにおいて頼りっぱなしだった。

一方、Jは日本語が完璧ではないので、私がJにできるたった一つのこととして、そこは全力で支えた。ほんのわずかでも頼りにされるのは嬉しかった。


変わり者で、人が良すぎて、腰が低くて、社内政治と日本語が下手なJは、その優秀さにもかかわらず評価してもらえない状況が続いていた。私のほかにも何人かJを大好きな人間が、彼を支えようとしたけれど、上層部が彼をダシに使う悪癖が治まらず、Jは辞表を出した。


Jからの引継ぎをして始めて、私のせいで増えていた彼のルーチンワークがとても多かったことを知った。その仕事の存在すら私は知らなかった。こんなにたくさんの仕事を、文句一つ言わず一人で抱えていたなんて。


何か仕事を頼みたくて、
「今忙しい?」
と聞くと、必ず
「暇です。遊んでました」
と答えるJ。

私なんか足元にも及ばない、雲の上の人だと思った。


退職が決まってから、よく二人で飲みに行っている。私は毎度Jに不安を訴えてしまう。
I cannot stand alone.それに、Jがいられないような会社になんかいても、意味が無いよ。
You are beautiful, clever, gentle, and everyone feel nice with you.僕なんかいなくたって何も変わらないよ。You are kentyanayo.
クレオールでのやりとりを何度も繰り返してしまう。

Jは母国の酒を飲みながら、、故郷の友人の話をする。義兄弟の契りを交わしたという親友の話。
酔った勢いで、私も口をすべらす。
もし私が男だったら。
Jと永遠に友人でいられたかもしれない。
でも私は女だから、このままだとJを好きになってしまうから、
そうしたらいつか別れる時が来てしまうね。
それは辛いことだね。
それはイヤだな…

「僕はあなたを尊敬しています。
僕を一生懸命助けてくれたことは、永遠に忘れません。」

そして私とJは、友人として、手をつないで駅まで歩き、別れる。Jと飲めるのは、あと2日。