ロシアの異郷もの

koikeakira2010-08-14

たいして詳しくはないですが、ロシアの近代クラシック音楽が肌に合います。なんでも好きです。

特に、リムスキーとボロディンストラヴィンスキーあたりの、「異郷もの」ともいうべき、物語を持った、妄想たっぷりのファンタジー音楽。大好物です。

ロシアの当時の社会情勢や風景が陰惨だったからこそ、異文化への強烈な憧れが名曲を生んだってところでしょうか。千夜一夜物語にフルオーケストラで曲をつけるとか、本当にバカな真似をしたものです。最高です。



最近その、ロシアの異郷モノのコンサートがたくさんあって、ぽつぽつ行ってます。
今日は結成2年目という無名プロオケの定期公演に行きました。
先週日本フィルで聴いたのと同じ曲をやるということで、比較しては可哀相だと思っていましたが、そんな心配は無用、かなり面白かったです。

演奏技術そのものは完成していない部分もあり、みんな指揮者見てなかったり、衣装のセンスが一昔前だったり、入退場のタイミングを見誤ったり、動きの変なのが一人いたりして、個性的というか、洗練されていない。でも、いいところがいっぱい。
なにせ走り出したばかりのオケの命運を掛けた定期公演。気の入りようが違います。日本フィルみたいな安泰したオケには、もはや永久に無いものがあります。



目当ての演目はリムスキーの「シェエラザード」。
これは私は本当に大好きな曲なので、約50分の演奏時間ですが、音の一粒一粒を覚えており、ずっと集中して聞けちゃいます。
しかし、こなれたオケの演奏だと、この集中が裏切られることがよくあります。
さらっと楽譜をなでているだけで、何の工夫も無い音だったりして、聴いているこちらの方だけが一方通行の片思い。

演奏技術の高さは折り紙つきなもので、せいぜい2〜3回の音合わせでそのまま本番に出てきました…っていうのは普通なのかもしれないけど。いわば経済的な演奏です。そんなの聴きに行ったって意味無いのです。



今日の演奏は、50回も60回も音合わせしたんだな、っていうのが伝わってきました。しっかり味の染み込んだ演奏で、一音一音に作りこみがあって面白くて、私の集中力に応えてくれました。
一体感もすごいし、きっとみんな、どこをどう弾くか、すべて覚えちゃってて、進行もカンマ一秒まで体に刻まれているものだから、指揮者はいらないみたい。ほんとに見ねえwちょっとでいいから見ようよ頼むよw


こうなると、オケというより、演劇に近いと思いました。
たった一つの演目を繰り返し上演する劇団がありますが、そんな感じでした。
そしてロシアの異郷ものは、そのまま舞台にできるようなストーリーを持っているから、演劇スタイルがまたしっくりきます。
バイオリンのソロでシェエラザード姫を表すところなんか、もう艶っぽいったら。コンマスさんは男性でしたが、なりきってましたよあれは。


楽団は劇団みたいに、そうそう同じ演目をやり続けるわけにはいかないから、これからも色々な曲をやることとは思いますが、変に慣れてしまわずに、「演奏レベル」を見せようなどとしないで、「成果」の部分をまた見せてくれると嬉しいな。

本当に耳の栄養になる、いい音でした。
パトロン制度に参加するなら、大手よりこっちの方が断然面白そうです。


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