God given voice

koikeakira2005-05-25

カエターノ・ヴェローゾの東京公演、最終日を狙って行って参りました。セルジオ・メンデスから飛び火したブラジル音楽流行りで、彼の名を知らない人は最近ぐんと減ったのではないでしょうか。彼の魅力はただただその声です(他にもいっぱいあるのですが)。儚く弱々しく、無防備なほど優しく、中性的でさわやかなのに官能的な声。その声が甘くまろやかなポルトガル語に乗ると、(ポルトガル語には「にゃあ」とか「あおん」なんて、ネコの鳴き声みたいな音が多いのです)男も女も聞くだけで気をやりそうになるというエロテロリストです(違)。神が与えたもうた声は、彼がどこに生まれどのような人生を歩もうとも、歌を人から求められる運命へとカエターノを導くのだと思います。
とても充実したステージでした。演出はものすごく地味なのに。カエターノは椅子に座って歌いながらシャツの袖をめくったり、腕を広げたりする仕草がすごく落ち着いていてリラックスして、幸せそうでした。なので、まるで恋人の部屋で恋人が戯れに歌を歌うのを眺めているような錯覚に陥ります。そんな充実感が、一曲一曲に込められていて伝わってきます。夢心地です。
前半は「ああ、弾き語りね」という感じでしたが、後半になり動きの多い曲が増えてくるにつれ、彼の歌唱力の底知れなさに唖然とするのでした。声の質だけではなくて、歌の技巧においても天才という他に言葉が出てきません。
ステージ自体には文句はあまり思い浮かびません。あえて言うなら、ドラムがいかにも小綺麗な都会のジャズという感じで、味わいが無かったこと。明らかに浮いていました。これについては後述。