退行催眠体験記

koikeakira2005-04-20

ヒプノセラピーを受けに行きました。前々から興味はあって、いつか行ってみようと思い続けて数年。とうとう踏み切ってみました。
セラピストの方と数回メールを交換してからセラピールームへ向かいました。普通のマンションの一室に自宅兼という感じで、小さな看板が掛けられていました。こぢんまりとした感じのいいお部屋に迎えてくれたのは、想像していたより若いセラピストの女性でした。

緊張!

中国茶を頂きながらセラピーをどう理解しているかという質問をされると、あろうことか緊張してろれつがうまくまわりません。会ったばかりの方にこれから極めて個人的な話をするのかと思うと、そしてその問題の解消を手伝わせるのだと思うと、恥ずかしいやら気まずいやら。しかしセラピストの方が私をリラックスさせようと、一生懸命お話しをしてくれるので、その気持ちを受け取って安心することができました。

お話ししたこと

セラピーに関することから他愛のない話しまで、一時間以上対話をしていました。長いなあ、と思いつつもそれが催眠の導入に必要なプロセスなのだろうと感じながら、面白い話しもいくつか聞けました。
例えば。オカルト的表現で言えば、前世の自分の霊は現在の自分自身に憑依していて、ヒプノセラピーはその除霊であるとか、私に必要な前世の「思い」はあえて取り除いたりはしないし、できないということなど。また、よく「私の前世はマリー・アントワネット」と言う人がいたり、タイタニック号に乗っていたという人が何人もいるのは、それはマリー・アントワネットタイタニック号がその人にとって解り易いモチーフであり、そのモチーフをかりて記憶は残るし、語りかけてくるものであると。美輪明宏天草四郎の生まれかわりではなかったかもしれないけれど、天草四郎のように他人を導く才能を持った人だった可能性はかなり高いと思われるのだとか。前世療法の体験談にありきたりな、ともすれば陳腐で話すのも恥ずかしいようなストーリーが多いのは、そういう理由なのだそうです。

導入の説明

「導入の入り方は、目をつぶってこちらに横になって頂いたら、深呼吸をしつつ広い草原にいる様子を想像してもらいます、その草原の近くに大きな樹があります、と私が言うので、その通りにイメージしていって下さい。そしてその樹の幹に穴が開いていて、穴には地下へ続く階段があることや、部屋へと続いている様子や、部屋に扉があるということを伝えますので、イメージしてください。その扉を開けると光のイメージが出てきますので、そこからは見えたものをおしゃってください」
と、この段階では催眠ではないのですが、私はここですでに意識が一瞬持っていかれたので驚きました。瞑想力や集中力に自信はあったので、退行催眠はきっとかかりやすいだろうとは思っていましたが。

導入

さて、質問などを終えていざ催眠の導入へ。
ソファーに横になり、深呼吸をして目を閉じ、声のままに全身の力を抜きます。つま先から、くるぶし、足首、と部分ごとに「ここの力がぬけます」と指示されると、本当に言われたとおりに力が入らなくなります。ちょっとやそっとでは動きません。本気になって抵抗すれば動かせそうなのですが、それは目的から外れるのでしませんでした。
全身の力が抜けると、こんなようなことを言われました。「あなたは広い広い草原にいます。空は青く、雲はふわふわと漂っています。草花はやわらかな風に揺られています」と。このほんの入り口の段階で、私には何とも言えない、悲しみのような喜びのような、あるいは感謝のような感動的な気持ちが溢れてきて、ボロボロ涙が出てくるのを止められませんでした。嗚咽が漏れるわけではなく、頭が熱いような感じがするだけで、ひたすら涙が出てくる状態は催眠中ずっと続きました。後で話しを聞いたところ、この涙が出るというのが退行催眠の特徴だそうです。

海が見えた

声の導きに従って樹や階段をイメージし、扉を開けて光のイメージを抜けると、海と島が見えました。この「見えました」というのは映像として見えるのではなくて、基本的には夢を見るようなぼんやりしたイメージです。なので、これが自分で「見ている」のではなく「見せられている」ものであり本物だと認識するのに、抵抗があることは否めません。退行催眠が体験者にすらインチキ臭いと思われがちなのも仕方ないような気もします。

若い男

私は砂浜に立って海と近くの島を眺めていました。視点は客観点ではなくその場にいる人物と完全に同化しています。始めは自分が男性が女性かもわかりませんでしたが、足もとを見ると足の裏に砂のと水の感触を感じると同時に足に毛が生えているのが見えて、男性だとわかりました。便宜上J君と名付けておきます。褐色の肌に赤茶けた髪、年は27。なぜかはっきりとその数字が出てくるのには我ながら驚きでした。性格はもの静かで、すばらしく健康的な体をしておりそれを自慢に思っていましたが、欲を言えばもうちょっとガタイがよくなりたいという気持ちも感じました。Jはちょっとナルシストのようです。自分の体に対する恍惚とコンプレックスは、手に取るように伝わってきました。

私が見るべきもの

私は今回のセッションにおいては、別れて一年以上たつ今も、なお私を束縛し続ける元恋人との前世での関係を知り、束縛から逃れたいと思っていたので、彼の姿をイメージできるように頑張りましたが、見つけることはできませんでした。何かに視界を阻まれているような感じもありました。これは、今見ておくべき前世というものがある場合、それが優先的に現れてくるというものなのだそうです。今回私が見ておくべきなのは元恋人ではなかったということのようです。
そのかわりに、Jの目の前に現れたのはJの年の離れた妹でした。現れた瞬間にそれが現在の私の娘だということがわかりました。顔が同じに見えるのです。全然違う顔なのですが、重なるように見えました。色白や癖っ毛などの特徴も現在に通じています。
妹は傷口に入った黴菌が原因で、四才になってすぐ死んでしまったようです。そのケガの原因はどうやらJ本人らしく、Jは自分を責め続けていました。この印象が強烈でした。Jは私に娘を守るようにと言っているのだと思います。今度は守ってあげたい、と。確かに私は娘がケガをしたり、事故に合うことについてかなりの心配性です。落ちるのが怖くてまずベランダには出さないし、二人で歩いている時に車が近くを通ると端に寄るだけでは不安で必ず抱っこしたりします。「もしかしたらこの子は大きくなれないかも」と想像することも多くて、そのたびにイヤな気分になり自己嫌悪していました。他のことについてはいい加減で心配性とは言えない性質なのですが。これはJの思いが伝わってきてのことなのかもしれません。
Jの両親の姿も見ることができて、陽気で太ったJの父親は現在の私の母そのものでした。病気がちのJの母親は、誰だかわかりませんでした。これは後になってわかることもあるそうです。
島はポリネシアにあるということはJは知っていましたが、島の名前は現在の私が知っている名前ではないため、わかりませんでした。この微妙な「わかる」部分と「わからない」部分の兼ね合いが、神秘主義ならではの感覚と言えそうです。
Jは28才で、海の中で足にロープがからみついて溺死したようです。妹のことで無気力になりがちだったけれど、そこそこ幸せな人生だったようです。
その後魂の世界に行けばハイヤーセルフと呼ばれる神のような存在との接触し、この前世のや今世のテーマなどが聞ける場合があるそうですが、残念ながらそういったものは現れませんでした。多少経験が必要なのだと思います。

疲れ

ヒプノセラピーの特徴として、涙が出るのと、疲れるというのがあるそうです。一時間ただ横になっていただけなのに、ものすごい疲労感で立ち上がるとふらふらしました。セラピストの方も初めて体験した時は、すぐに寝込んでしまったそうです。

自己催眠

すばらしく催眠にかかりやすい、とセラピストの方にお墨付きを頂いたので、帰宅してから調子にのって自己催眠に挑戦してみました。
まず、つま先の力を抜き、足首の力を抜き、ひざの力を抜き・・・とやっていくと、何のことはない、普通に寝てしまいました。上手い人になると、この調子でベッドに入ってから2秒で熟睡でできるそうです。これは便利です。ぜひもっと練習してマスターしようと思いました。

元恋人に会えた!

改めて自己催眠に挑戦してみました。夜寝る時に、なんとなくセラピーの時と同じ感じがしてきたのでその感覚を捕まえようとすると、導入を通り越して海が見えました。今度はカリブ海です。私は若い女性で現地で生まれ育った人間です。時代は大航海時代で、ヨーロッパから来た、髭を生やした身分の高そうな白人男性と一緒に風通しのよい家で暮らしています。男性はどうやら船が沈んでしまって帰れないようです。提督だったようですが、船を沈ませてしまった責任からも国には帰れなくて、海を眺めては故郷に思いを馳せているようです。
提督は私のことを愛してくれていました。私は彼の飼い猫のような存在です。二人は日々、何をするわけでもなく性愛に耽っていました。私も彼のことをすごく愛していたのでとても幸せでしたが、彼は軌道から外れた自分を、堕落したものとみなしていました。いつか帰らなくてはいけない、自分の本当の居場所はここではない、と信じているようでした。私はそれを慰めるように、あるいは彼をさらに深みへと連れて行って何も考えられなくさせるために彼を誘い続けていましたが、彼が本当は故郷に帰りたいのだということはわかっていたので、ずっと胸に棘がささっているようでした。そこでイメージは終わってしまったので、その後二人がどうなったのかはわかりません。
このイメージの中にいる間、私は自分が提督なのか女性なのかもよくわかりませんでした。イメージが終わる頃になってからやっと、自分が女性で、提督は元恋人なのだとわかりました。

現在とのかかわり

二回の前世見をして、これだけは確かだと言えるのは、前世での妹が現在の娘だということだけです。それだけははっきりと知覚に訴えてきました。これは私がもっとも知る必要があった前世だというのが、ヒプノセラピーの考え方だそうです。Jは私に大して、今度こそは娘のことを守ってやれ、と願っていることでしょう。提督と女性の関係は、私には自分自身と元恋人以外の誰だとも思えないのですが、ありそうな話しといえばそうだし、他の誰かが同じシチュエーションを経験しても自分だと思うかもしれません。しかし、私には愛した男性を直接的ではなくとも、堕落させてしまうのではないかという恐怖に囚われていたことも気付きました。おまけですが、白人と褐色系のカップルに昔から憧れていたことも面白い偶然です。

信じるか、信じないか

肝心なのは、この前世療法の経験を信じるか信じないかではなくて、活かすか活かさないかだと思います。人によっては前世になぞらえた象徴的な出来事が現実で立て続けてに起きて、信じざるを得ないという場合もあるそうですが。
私にとってヒプノセラピーは、必ず何かを考えさせてくれる物語の名作を、無限に収めた本棚という感じです。おそらくハズレはありません。今回は二つとも海で美しい映像ばかりでしたが、これから退行催眠を続ければ恐ろしい出来事や衝撃的なシーンにも遭遇することとは思います。でもそれらに大して、何かしらの意味を探そうとする姿勢を覚えさせてくれるのも、重要な利点だと思います。この姿勢で他の本や作品も読むことができたら、得るものの大きさは計り知れません。
今の私には、自分の思い通りに自己催眠ができるわけではありません。あくまで感覚がつかめた時だけです。瞑想を含めた技術を磨いて、自己催眠が使えるようになりたいと思います。寝る前にちょっとイメージトレーニングをするだけで簡単だし、面白いし、ぐっすり眠れます。興味のある方はぜひ。